退職しました: シリコンバレースタートアップからホンダのDX
2015年から働いていたDrivemodeというシリコンバレースタートアップ(2019年にホンダグループ入り)を、先週に最終出社として退職をしてきました。
そもそも後述するホンダのDXは、とてもうまく進んでいましたし、仲間も増えましたし、これからもっとやっていくぞという気持ち満々だったのですが、とても無視できない良縁があり、Drivemodeを退職することとなりました。
体が2つあるならば・・・と思っているところです。
Drivemodeジョイン(2015/02)〜Exit(2019/09)まで シリコンバレーのスタートアップエンジニア
ひたすらエンジニアやっていました。画像はメインのAppリポジトリのものです。
「シリコンバレーのスタートアップ」を存分に楽しみました。いくら働いても燃え尽きることなく、ずっと走り続けられました。ピッチコンテストや技術カンファレンスに登壇したり、雑誌やネット記事に載ったり。
全員ロックスターのように圧倒的当事者意識を持ち、職能の幅を超えて全員で一丸となって同じものを目指す日々でした。
Exit後(2019/09)〜現在(2022/10)まで ホンダのDX推進リード
ホンダがDrivemodeを買収するという理由、これにはホンダ自身にシリコンバレーのソフトウェアベンチャーのカルチャーを取り込むという、当然誰もが思いつくであろう目的がありました。自分もエンジニアでありつつも、アジャイルリーダーとしての自覚はありましたし、Drivemode社内でも様々な変革をしてきました。この熱量を、今度はホンダの変革に使いたいと思い始めました。
これまでのエンジニア、スクラムマスター、アジャイルコーチなどのキャリアを元に、CEOからそういったチャンスをもらったことが、正式なスタートです。
それがホンダのDX推進リードです。
ホンダのDX変革
僕の言うDXとは単なる業務効率化のためのデジタイゼーションとか、ソフトウェア・プロダクトそのものではなく、それを持続的に支えるエンジニアリング組織をつくるということ(≒Developer eXperience)です。
結局どういう状態から、どんなことをして、どういう成果をあげられたのか。書きたい気持ちは強いですし、書き出せば山のように書くことが出てくるのですが、ホンダは皆さんご存知の超有名企業であり、機密管理も厳しく行われていますので、かなり抽象度を上げ、比喩表現を使って表現してみます。
DX変革を、広大な荒れ地を整備して、今風なまちづくりをするようなプロジェクトに例えるならば、その広大な荒れ地の雑草は取り払い、地盤改良を行い、心地よく住める一軒家を建てるところまではできました。
ここに至るまでフルコミットで2年かかりました。最初は、よそ者の一人がなんかバズワードのDXやるぞとか言ってる人が絡んできたぞとかそんなことを思われていたかもしれませんが、一つ一つ口先だけではない成果を上げるたびに組織全体からの信頼度が増してきたことを強く感じられました。僕と一緒に走ってきていただいた方々には本当に感謝しています(そんな中で先に離脱してしまい本当に惜しい気持ちになっています)。
DX Criteriaの活用
DX Criteriaには本当にお世話になりました。DX推進に着手する前から目をつけていて、これはホンダのDX推進に使えるぞと継続的にウォッチしてきました。今となってはDX Criteriaプロジェクトに参加し、自らDX Criteriaを育てることに取り組ませていただいてます。DX Criteriaについてはこちらから。
dxcriteria.cto-a.org
DX人材が幅広い専門スキルが必要な理由
DXの難しさを強く感じました。そこに人と金がないのであれば、いざとなれば、最初から最後まで、また抽象から具体まですべて自分がやるしかない。特にDX変革を第一線で引っ張るリーダーにはこの幅広い実務スキルが必要でした。
人と金がないからできないと言ってると、それを解決するだけで何年かかるかわかりません。内製開発を推進する理由と同じく、自分が圧倒的スキルを身に着けて自分で全部やるのが結局早くて質が良いのです。
DX人材とはこういう人です pic.twitter.com/qEJryB8deA
— 中西裕太郎|TENTIAL CEO (@yu_isbznd4) 2021年3月15日
この画像の中心部はDX変革リーダーの必要なスキルセット。広く浅くではなく、そこに人と金がないのであれば、広く深く習得している必要があります。
実際これだけではなく、ソフトスキル(上記ツイート画像のビジネススキルの領域かな)がすごく重要だということもわかりました。力のあるアジャイルコーチが、まずは現場の信頼獲得に全力投球するのと同じく、現場との関わり方ももちろんのこと、部門長やエグゼクティブが日々どういうことを考えているか、どういうことを不安に思っているか、どういうサポートを求めているか、どういったアウトプットをすれば信頼を獲得できるかを、”極めて少ない情報を元に”、的確に捉えて接することも最も重要なことの一つでした。
今のホンダとDrivemode
ホンダはグローバルで20万人を超える組織なので、もちろん僕の把握していない組織範囲はありますが、その一部には確かに、高いレベルアジャイル開発を実践し、お互いに尊敬しあい、日々モダンなクラウドサービスでコミュニケーションを取り合い、情報をまとめ、システムはモダンで、バッチリデザイン思考であり、データドリブンなプロダクト開発を行い、そしてなんと言ってもみんなそれぞれが優秀(超有名企業人材ですし)な組織が存在します。
みなさんがイメージするような、「社内に敵となる人や上司、部門長、役員がいて、説得できない」みたいな状態では決してなく、彼らのうちの重要組織は攻めのマインドセットを持っているのは確かです。みんな一丸となって、「同じ敵」を倒そうと頑張っているのが実情です。
僕はDrivemodeを去り、ホンダのDX変革から離れますが、Drivemodeではすでに僕のやってきたDX変革プロジェクトを組織化しており、強力な人材を採用し、未来を託しています。彼らなら引き続き良い成果を挙げられること間違いなし。しかもDrivemodeのCEOは本当に強い人です。こんなに頼れるボスはいない。
理念
DX推進を行う中で、心が折れそうになったときや、人に物を伝えるとき、組織を引っ張るときの強力なメッセージとして僕が使っていたものを一部書いてみます。もちろん中には他の人の言葉をパクったものもありますが、こういうビッグなワードは本当に役に立ちました。
「メッセージは投げなきゃ伝わらない。」
「DXはCEOとCTOの総力戦」
「情報をオープンに共有しよう。デフォルトオープン。」
「文化は組織構造に従う」
「アジャイルになることを諦めたら、その時点であなた方はアジャイルではない。」
「アジャイルになることを目指し続けるのであれば、成約を一時的に破るのも悪くはない。」
「自律的組織に必要な条件とは、0.1秒以内に現状を把握できること、ゴールが明確であること。」
「勇敢であろう。あなたのボスや偉い人が簡単に諦めていることでも、本当に無理かどうかを確かめもしないで諦めるのはやめよう。」
「人生はそう長くない。今日寝て、明日起きたらもう5年経ってますよ。」
「プロセスをどうしても作りたいなら、プロセス自体をプロダクトと考え、継続的にそのプロセスをエンジニアリングせよ。」
「チャンスの扉はいつも開いているわけではない。」
「プロダクト開発をしなくても、アジャイルソフトウェア開発者宣言を守り、スクラムの3本柱を考えよう。」
「Over Planning, Over Analysisをやめ、Over Communicationを活用しよう。」
「家族やあなた自身を犠牲にして仕事をするのはやめよう。」
今後について
まだ12月までDrivemode社での有給消化期間となるため、後日書きたいと思います。